鏡面塗装の秘密とは?栗原木工所に聞く仏壇塗装の舞台裏

「かつてない鏡面塗装®」を生む工房

艶やかで奥行きのある塗り、わずかな光も美しく反射する鏡面仕上げ。埼玉県さいたま市に工房を構える栗原木工所は、独自開発した『かつてない鏡面塗装®』で、これまでにない現代仏壇の質感と存在感を実現しています。



最新作の『オペラ』、そして位牌『宝珠(ほうじゅ)』に込められた塗装のこだわりを、専務の栗原章人氏に伺いました。

鏡のように映り込む、美しすぎる塗装

栗原木工所の工場内にあるショールームに案内していただきました。目に飛び込んでくるのは、壁一面に整然と並べられた塗装サンプルの数々──その数、およそ200種類以上。家具やインテリアはもちろん、ギター、食器、ソフビ人形に至るまで、あらゆる素材に塗装してきた同社の技術力を物語っています。


中でも高い評価を受けているのが、独自開発した「かつてない鏡面塗装®」です。



一般的な鏡面塗装と、「かつてない鏡面塗装®」の違いは一目瞭然。比較用のサンプルを見せてくれた栗原氏は、「左側が従来の鏡面、右が当社のものです」と説明します。前者がやや曇りを帯びて表面に凹凸があるのに対し、後者は鏡のように周囲の景色をくっきり映し出す仕上がり。反射の質が、まるで違います。


この仕上がりの秘密は、栗原氏がかつて修行した会津塗にあります。伝統技法の知見を活かしつつ現代の素材と道具に合わせて改良を重ねることで、この美しい鏡面塗装が完成しました。

設備までも自作する、徹底したこだわり

栗原木工所の塗装工房には、「かつてない鏡面塗装®」を支えるためのこだわりが隅々にまで行き渡っています。


特注で設けられた塗装ブースは、空気中の塗料の舞いを最小限に抑える水洗式。噴霧された塗料は水によってすばやく回収されるため、室内の空気は常に清浄に保たれています。実際、ブース内に入っても塗料が舞っている様子は一切見られませんでした。


塗装に使うスプレーガンも、既製品ではなく自社で開発したものを使用。特殊で扱いの難しい塗料でも、狙った厚みや粒度で安定して噴射できるよう調整されており、美しい鏡面を生み出すには欠かせない道具となっています。



また、塗装においてはほんの小さな埃や塵さえも大敵です。わずかでも塗装面に付着すれば、滑らかな仕上がりを損ねてしまいます。そのため、乾燥工程を行うクリーンルームは三重扉で区切られ、出入りによって空気が乱れることもありません。風の流れすら計算し尽くされた空間の中で、塗装された仏壇は静かに乾燥され、艶やかで曇りのない鏡面に仕上げられていきます。


こうした徹底した環境整備と技術開発こそが、唯一無二の美しさをもつ塗装を可能にしているのです。

新商品『オペラ』の木目に深みを宿す青

オープン型仏壇『オペラ』には、栗原木工所が誇る鏡面塗装の技術が惜しみなく注がれています。須弥壇には、美しいバーズアイメープルの杢目を引き立てる深い青が施されていますが、実はこの「青」の表現には、塗料メーカーと共同開発した特注の塗料が使われています。


通常、木材の地の色が影響して、青の塗料を塗ると緑がかってしまうことが多いのですが、『オペラ』ではその問題を克服。わずかな量の違いでも発色が変わってしまうため、職人が経験と感覚を頼りに微調整を重ねながら、塗り加減を見極めていきます。塗装を重ねるごとに色は深みを増し、透明感と艶を両立させた鏡面に近づいていきます。


中でももっとも時間を要するのが、塗装後の乾燥工程です。一度塗装を終えると、1日以上しっかり乾燥させてから、木材の歪みを整えて再度塗装。これを計7回、根気よく繰り返します。こうして手間と時間を惜しまず丁寧に仕上げられた、『オペラ』は、深みのある青と、映り込むような艶を併せ持つ、唯一無二の存在となるのです。



▲塗装見本。試作を繰り返して、あの深い青が生まれた

金属箔と透明感のある塗装が織りなす、モダン位牌『宝珠』

もうひとつの注目作が、金属箔がきらめく、透明感のある塗りが特徴の現代位牌『宝珠』。シンプルでモダンなフォルムに、どこか懐かしさを感じさせる伝統的な意匠を織り交ぜ、現代の暮らしに自然と馴染む落ち着いた佇まいを実現しています。カラーはブラック、ブルー、レッドの3色展開。静かに、けれども確かな存在感を放ちます。



『宝珠』の塗りに込められているのは、栗原木工所の豊富な経験と高い塗装技術です。その奥行きある艶やかな表情は、金属箔の上に塗装を重ねるという、非常に高度な技術によって生まれます。とくに金属素材への塗装は難易度が高く、さらに曲面への仕上げには、箔貼りから研磨、塗装に至るまで一つひとつの工程に熟練の技が求められます。


まずは下地を整え、次に箔を貼り、塗装、乾燥、研磨…といった工程を丁寧に重ねること、実に10工程以上。丹念に積み重ねられた作業の先に、『宝珠』ならではの深みと輝きが生まれるのです。

細部まで丁寧に向き合い、見えないところにも決して手を抜かない。そんな真摯なものづくりの姿勢が、塗装に命を吹き込み、製品全体の完成度を引き上げているのだと感じさせられました。

<商品ページ>
・オペラ
・宝珠 ブラックレッドブルー  ※サイズは3.5-4.5寸の3種類展開

実物はお近くの現代仏壇の店舗ギャラリーメモリアでぜひご覧ください。デジタルカタログもご用意していますので、気になる方はぜひチェックを。

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このコラムについては
八木研の商品企画室に勤務し、商品の企画・デザイン・開発に関わっています。商品にまつわるこだわりや、開発の裏話など、カタログに収まりきらない情報を公開し、現代仏壇の魅力を伝えていけたら良いと思います。