職人の手技による逸品-宙吹きガラスの仏具「夢見草」編ー

暑い夏は冷たい飲み物ばかり飲みたくなってしまいます。

この写真に写っているガラスのコップは、いつも当社の仏具を作って頂いている「津軽びいどろ」の工房で、宙吹きガラスを体験させてもらった時に私が作ったものです。

透明なガラスに、細かく砕いた色ガラスのチップを巻き付けて模様を作りました。
溶けたガラスは炉から外に出すとどんどん冷えて固まっていくため、作業はスピードが命なのにも関わらず、不慣れで緊張している私は固い動きしかできません。棹を回すだけでこんなにも難しかったのか!と思いながら汗をかいていました。

なんとかコップとしての形を維持するために職人さんにサポートして頂いたにも関わらず、ぐにゃぐにゃで歪・・・。思っていた形からは程遠い仕上がりとなりました。

溶けたガラスを扱い、他に1つとして同じものはない1品ものだからこそ味があって魅力的。歪でも初めての体験で出来た作品なので愛着があります。

とはいえ、仏壇に合わせ使いやすいように寸法設計した仏具の場合はお客様に安心してご購入頂けるようサイズやフォルムのイメージが異ならないように合わせて仕上げないといけません。

それまで何気なく見ていた職人さんの腕の凄さに、改めて感動した経験となりました。
「宙吹き」は、坩堝から高温で溶かしたガラスの素地を必要な分だけ棹に巻き取り、息を吹き込んで空中で成形するガラス工芸技法です。ドロドロに溶けたガラスを、棹を回しながら形を整えていきます。

ひょいひょいと棹を上手に扱いながら、一見簡単そうに作業されているようにも見えますが、実際は経験を積んだ職人でないとできない動きなのです。

当社のガラス仏具には、『八甲田』『竜飛』『夢見草』など、この技法を用いて作られたものがいくつかあります。
この金魚鉢のような形の仏具『夢見草』は、涼し気で可愛らしいイメージから想像できないような職人の高い技術が必要です。

可愛いピンク色のイメージに合うぽってりとした丸みのあるラインと口の部分の立ち上がりにデザインのこだわりがあります。溶けたガラスにピンクと白のガラスを巻き付けて模様を表し、炉から出しては形を整え、理想のフォルムになるまで職人さんの作る傍で相談して今のかたちが出来上がりました。

シンプルな形だからこそ慎重に仕上げなければ物のイメージが変わってしまう難しい作業でした。
ガラスを溶かす1200度もの熱い炉がたくさんある作業場は大変暑く、特に夏は大変です。そんな中、商品1つ1つ丁寧に制作する職人たちがいることに思いを馳せると、ものの見え方たが少し変わるのではないでしょうか。

モダン仏具  夢見草



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八木研の商品企画室に勤務し、商品の企画・デザイン・開発に関わっています。商品にまつわるこだわりや、開発の裏話など、カタログに収まりきらない情報を公開し、現代仏壇の魅力を伝えていけたら良いと思います。