暮らしに寄り添うモダン盆提灯「tocco」 ー八女提灯の職人を訪ねてー

今の暮らしにフィットする盆提灯とは

皆さんは「提灯」と聞くと、どんなイメージがありますか?近年では居酒屋やお祭りで飾られていたり、神社の社を照らすものであったり…。特別な場所で飾られていて、普段の生活の中で身近に感じる方は、少ないかもしれませんね。



家に仏壇がある方は、お盆の時期に飾る「盆提灯」として見たことがあるかもしれません。「盆提灯」は本来、お盆の時期に故人を家へ導く灯りとして、仏壇の周囲に飾ります。しかし、時代の移り変わりとともに仏壇を置く家庭が減り、次第に盆提灯を飾る風習も薄れてきました。

ところが、それとは真逆に注目されているのが、「丁寧な暮らし」です。昔から日本人が大切にしてきた風習や、四季折々のしつらいを無理なく自分らしく取り入れて、心を伸びやかにしたいと願う人が増えているのです。



また、暮らしの中で心地良さを感じられるものとして「灯り」にも関心が高まっています。日照時間の少ない北欧の家のように、小さなランプを部屋に置いて光を灯すことで、時の流れが穏やかに感じられるそうです。

では盆提灯がシンプルにカタチを変えて、心を解きほぐす癒しの灯りにもなればどうでしょう。たとえ仏壇がなくても、夏のお盆には故人を迎える灯りに。普段はリラックスした自分時間を演出できる灯りとして。そんな風に柔軟にフィットしてくれると、とても魅力的ですね。

八女提灯の伝統と現代の暮らしをつなぐ、シラキ工芸



ある日、「新しい盆提灯が出来たんですよ」と声をかけてくださったのは、福岡県八女市にある提灯メーカー「シラキ工芸」の社長、入江さんでした。シラキ工芸は手作りの伝統工芸品「八女提灯」の技術を継承しながら、現代の住まいにも馴染むモダンな提灯を作った工房として話題になっています。

今回の新しい盆提灯も、職人の手仕事が活きた作品とのこと。その製作の様子が見たくなり、八女市へ向かいました。



八女提灯の起源は約200年前に遡ります。この地方は昔から豊かな自然に恵まれ、提灯づくりに必要な材料が採取できることから、明治・大正にかけて生産が始まりました。和紙はとても薄く、光を灯すと絵が透過して半分影になり、幻想的な雰囲気を感じられます。絵師が描く絵柄は夏の涼み提灯として名声を博し、全国的に広く知られるようになったそうです。



シラキ工芸の職人・大塚さんと車で工房へ向かう途中、土蔵造りが立ち並ぶ風情ある場所にさしかかりました。「このあたりは白壁の街並と呼ばれていて、八女の観光スポットなんですよ」。視線の先には、提灯を掲げた店舗がいくつもあるのが見えました。「実は昔はもっとたくさん提灯のお店がありました。でも、時代とともに閉店していってしまって…。」



八女提灯が衰退の一途をたどる中、立ち上がったのが社長の入江さんでした。盆提灯を飾る家庭が少なくなったとしても、八女提灯の良さをもっと知ってもらいたい…。今の暮らしに合う、シンプルで小さな提灯の開発にあたり、同時に考えたのは、若い職人の感性を活かしたいという思いでした。八女提灯の文化を絶やさず広め続けることと、伝統の技を引き継ぐ後継者を育てることの両方が使命だと入江さんは感じたそうです。





新しい盆提灯「tocco(トッコ)」は、明るい木部の持ち手がついた北欧風のスタイルに繊細な提灯絵が融合した、これまでにない盆提灯でした。タッチセンサーで点灯すると、柔らかい光に、桜・ハス・精霊馬の絵柄が浮かび上がります。じっと見ていると、どこか懐かしいような、穏やかで優しい気持ちになれるような…不思議な感覚が満ちてくるようです。

「ぜひ制作風景を見ていってください」と、工房を案内していただきました。

若い職人の技術と感性が活きる、盆提灯toccoの制作



シラキ工芸の職人は全部で6名。いずれも20~30代と若い職人ばかりです。これまでの経歴を伺うと、専業主婦、歯科助手にパン職人、大学から就職など、実に様々。皆提灯づくりに興味を惹かれて入社し、伝統工芸士を目指しています。



和紙貼りを担当しているのは、元々絵付師として入社された北村さん。前任の貼り師が退職する際に後任として抜擢されました。その技術は入江さんが「絵付けとの二刀流でとてもセンスがある」と言われるほど。



澱粉のりを薄めて和紙を貼り、ブラシでなじませた後、ワイヤーの切り替え部分をカミソリで丁寧に切り取っていきます。toccoの和紙貼りは一つ仕上げるのに1時間ほどかかるそう。その後、最大で10時間ほど乾燥させます。





火袋(ひぶくろ)を2重に重ねる伝統的な八女提灯の場合、「吹き付け」という作業も行われます。内側の火袋には絵具をスプレーで吹き付けて背景を描き、外側の火袋に絵付師が筆でメインの絵を描いて、奥行きを表現するのです。



吹き付けを作業を担当するのが大塚さん。型のデザイン・作成も大塚さんのお手製です。使用する型紙ごとに順番を決めてから、数十個の吹き付けを一気に行います。
(※toccoでは吹き付けを行っていません。)



最後に、絵付けの作業部屋を案内してもらいました。八女提灯の伝統技法である、10個の提灯を一気に描く「速描」が行われていて、部屋は順番を待つ火袋が整然と並んでいます。





精霊馬を担当しているのは、絵師の永山様です。ふっくらとしたキュウリとナスがトコトコ歩き回っているかのような可愛い絵柄。「この精霊馬は、元気いっぱいでご先祖様をお迎えするイメージを込めました。躍動感を出すために脚の角度を付けたり、瑞々しい艶を表現したので、そういったところもポイントです」。

原画はあるのですか?とお聞きすると、おもむろにタブレットを取り出す永山さん。デザインの構想をなんとタブレットで描いたそう!伝統の技法と若い職人ならではの手法が交わって生み出されたと知ると、なんとも味わい深さを感じられます。



絵師の江口さんは、桜とハスを担当しています。江口さんの中で「桜」とテーマを聞いた時に、ガラスのように透明感のあるイメージが浮かんだそうです。「桜の絵なのにブルーが入っているのはそのためなんですよ」と語る江口さん。





ピンク、紫、緑、スカイブルーの色を織り交ぜ、空間が華やかになるようにデザインしました。「提灯は光を通した時の見え方が一番大事なので、淡く透けて、模様が浮かび上がるように絵具の濃度を調整しています。」



「ハスは逆に部屋に馴染むようにしたかったので、一般的なピンクのハスではなく、白いハスにしました。従来の盆提灯にもよく描かれるモチーフですが、いろんな世代の方に好まれるように、若い方のSNSを見て、くすみカラーを取り入れるのはどうかなって。」

筆の両端に白とオレンジをのせて、繊細に表現されていくハスの絵。ミリ単位の細い茎も、風でそよいでいるかのようです。とはいえ、下書きなしの一発勝負で描くのが八女提灯の伝統。描く時に迷いが線に現れることもあるのでは…。



「提灯は凹凸のある球体なので、絵付けは経験を重ねた今でも本当に難しいんです。でも、大切な故人様を迎える灯りなので、描き始めたらもう迷うことはありません」。江口さんは描き終えた提灯を見つめながら、そう答えてくれました。

toccoの提灯絵に宿る想い

シラキ工芸の職人は全国の催事場で実演をしたり、ワークショップで海外の方や子供達に絵付けを教えることもあるそうです。そういったお客様との交流の場に行くと、提灯を購入する人の生の声を聞くことができて、とても良い学びになるのだとか。



「これまで、お客様からとても癒されたと直接声をかけてもらうこともありました。提灯絵が亡くなった方のイメージにぴったりでとても嬉しかったとお手紙をもらったことも。そんな時に全国のたくさんの人に提灯を届けたいと思うんです。このtoccoを迎えた人にも、温かい気持ちになってもらえたら…」



toccoの灯りがとても優しく感じられるのは、職人がお客様の悲しみも喜びも内包しているからなのかもしれません。大切な故人を迎える盆提灯として、普段の暮らしに寄り添う自分時間の灯りとして。想いを込めた提灯絵が柔らかな光に浮かび上がり、きっと灯した人の心を解きほぐしてくれることでしょう。

<商品ページ>
・盆提灯tocco 桜
・盆提灯tocco ハス
・盆提灯tocco 精霊馬

盆提灯toccoは全国のギャラリーメモリアでお取り扱いしています。



盆提灯toccoとその他のお盆用品の特集ページです。

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